三種の神器。これは、現代でもなにかにつけて使われる言葉ですね。冷蔵庫、洗濯機、自家用車なんてのが高度成長時代に三種の神器といわれてました。最近では、女子高生の三種の神器とかいって、名詞、ルーズソックス、PHS(でしたっけ?)なんていわれてましたね。
でも、正真正銘の三種の神器がなにであるか知る人は年々少なくなっているかもしれません。
三種の神器は天皇家に伝わる皇位継承の象徴で古来より尊重されてきた神宝です。三種というくらいですから、三つの神宝からなっていまして、八咫鏡(やたのかがみ)、八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)、天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)がそれです。
それぞれ有名な神話の中に登場していて、八咫鏡と八尺瓊勾玉は天の岩屋戸(あまのいわやど)に隠れてしまった天照大御神を招き出すために、八百万の神々が相談して伊斬許理度売命(いしこりどめのみこと)が八咫鏡を、玉祖命(たまのおやのみこと)に沢山の勾玉を貫き通した長い玉の緒を作らせました。そして天の香山(あまのかぐやま)の真賢木(まさかき)の上枝に勾玉を、中枝に八咫鏡をかけてかざり、天宇受売命(あめのうずめのみこと)が岩戸の前で踊り、神々がそれを見てどっと笑います。
不審に思った天照大御神がそっと岩戸を開けたところを天手力男命(あめのてちからおのみこと)が引き出しました。その後この八咫鏡と八尺瓊勾玉は天照大御神に献上されたようです。
もう一つの神宝である天叢雲剣は須佐之男命が八俣の大蛇を退治した時に、その尾から出てきた太刀です。須佐之男命は素晴らしい太刀だったので、天照大御神に献上しました。(後にこれが日本武尊(やまとたけるのみこと)の手に渡り、草薙の剣と呼ばれるようになりました。)
こうして天照大御神の元に三つの神器がそろったのです。そして天照大御神は天孫である邇邇芸命(ににぎのみこと)に三種の神器を授けて降臨させるのですが、この時に「この鏡はひたすらに私の御魂(みたま)として、私を拝むのと同じように敬ってお祭りしなさい。」と言っています。
さてさて、三種の神器についてここまでお話ししてきましたが、まあこれは一般論でして実は二種論もあったりします。
『日本書紀』の持統四年正月朔条、「養老神祇令」践祚(せんそ)条の両記述では、天皇即位に当たって中臣氏が天神の寿詞(あまつかみのよごと)を奏上し、忌部氏が「神璽の鏡剣」を奏上すると記されていて玉に関する記述がないんですね。
古代においては皇位継承の象徴とされたのは鏡と剣だけだったというのですが、どうやらこれには中臣、藤原派とその他の氏族の対立があるみたいです。
中臣氏は玉を神宝として皇位の印とするのに対して、忌部氏は強くこれを否定して、神宝は鏡と剣だけであると主張しています。
で、結論なんですけども、論述を書くと頭の痛い表現の羅列になってしまうので(私も良く理解できていません (^^ゞ)結果だけ・・・。鏡と剣は公式の行事でも認められているように、皇位継承の象徴です。そして玉は天皇家の族長としての象徴のようです。
分かりやすく言うと、鏡と剣は国家を統治する者としての象徴で公的な物、玉は天皇家という一氏族の中の族長である者としての象徴で私的な物ということになります。
(作者注)
自民党をモデルにすれば分かりやすいかも知れません。内閣総理大臣は国家元首ですが、同時に自民党総裁でもあるわけです。この自民党総裁の象徴が玉で、内閣総理大臣の象徴が鏡と剣だったという事ですね。
おそらく、天皇家の族長として玉を奏上する儀式を行い、そして国家の統治者として鏡と剣を奏上するという二段階の儀式が行われたのでしょう。これを三つまとめて行うように見せたのは、玉の奏上は後宮職員の尚蔵(くらのかみ)が執り行う儀式で、奈良時代以降これを行ったのはおそらく中臣(藤原)氏。ですから権威付けのためにいつのまにか即位の儀式に入れてしまったのではないでしょうか。
さて、太古の昔より受け継がれてきたという三種の神器ですが、その後はどうなったのでしょうか。
まず鏡ですが、これは平安時代には温明殿(うんめいでん)の内侍所に安置されていました。しかし三度の火災で闕屑(かげくず)となってしまい、源平の争乱のおりに他の神宝と一緒に平家一門によって持ち出され、壇ノ浦まで運ばれますが沈没は免れました。玉の方はいったんは海に沈みますが、箱に収められていたため再び浮上してきたそうです。
剣に関しては、壇ノ浦で沈んみそのまま発見されなかったそうです。ですから一時は清涼殿(せいりょうでん)昼御座(ひるのおまし)の剣で代用していましたが、後に伊勢祭主奉献の剣を用いることになりました。これらが今日まで受け継がれているようです。
八咫鏡は伊勢神宮で、天叢雲剣は熱田神宮で祀られています。また八尺瓊勾玉は皇居に保管されているらしいです。
というわけで、宮中に存在するのは勾玉を除いてレプリカでして、天皇陛下すら直接見ることが許されないそうです。まさに秘宝中の秘宝というわけですね。
まあ、本物はすでに無くなっていて現存しないなんて言う方もいらっしゃいますけどね。とか言いつつ私も、そっちの意見に一票投じますけどね。夢のない話で恐縮ですが (^^ゞ